【獣医解説】夏〜秋に急増!愛犬の耳のかゆみ・赤み・ニオイ「犬の外耳炎」の原因と正しく安全な耳ケア

8月後半から秋口にかけて、「うちのワンちゃんが頻繁に耳をかいている」「頭をバタバタと激しく振るようになった」「耳から黒っぽい耳アカが出たり、酸っぱいニオイがする」といったご相談が動物病院で一気に急増します。
夏場に蓄積された高温多湿な環境は、犬の耳の中に存在する細菌やカビ(マラセチア菌)にとって絶好の繁殖場所です。さらに秋口の寒暖差やアレルゲン(雑草の花粉など)の影響が重なることで、耳の穴から鼓膜までの通り道が炎症を起こす「外耳炎(がいじえん)」を発症・悪化させてしまう子が後を絶ちません。
「ただの耳汚れかな?」と放置したり、市販の綿棒でゴシゴシ擦ってしまうと、かえって炎症を悪化させて強い痛みや難聴を引き起こす危険があります。
「横浜上永谷あお動物病院」が、夏〜秋に犬の外耳炎が増える理由、注意したい危険なSOSサイン、やってはいけないNGなお手入れ、ご家庭でできる安全な耳ケア方法を分かりやすく解説します。
■ なぜ夏〜秋に犬の「外耳炎」が急増するのか?

犬の耳は人間とは異なる複雑な構造をしており、夏の終わりから秋にかけてトラブルが多発する条件が揃っています。
1. 犬特有の「L字型」の耳道構造
人間の耳道(耳の穴)がまっすぐなのに対し、犬の耳道は途中でL字型に大きく折れ曲がっています。そのため奥に湿気や体熱、耳アカが溜まりやすく、非常に蒸れやすい構造になっています。
2. 高温多湿による「マラセチア(酵母菌)や細菌の増殖」

夏場の蒸し暑さによって耳の中が蒸れると、普段は無害な常在菌である「マラセチア(カビの一種)」や「ブドウ球菌」が爆発的に増殖します。シーズー、コッカー、レトリバーなどの「垂れ耳犬種」や、耳の中に毛が多く生える犬種は特に注意が必要です。
3. 秋の花粉・アレルギーによる「皮膚バリア機能低下」
8月後半から飛散が始まるブタクサやヨモギなどの秋の花粉、ハウスダストによるアレルギー反応が耳の皮膚に起こり、強いかゆみや赤みを引き起こします。
■ 見逃さないで!犬の外耳炎を見分けるSOSサイン

外耳炎は初期段階で発見し、適切に対処することが早期回復の鍵となります。以下のような異変がないかチェックしてみましょう。
[外耳炎の代表的な症状]
- 後ろ足で耳の裏や穴を激しくかく、床や家具に耳をこすりつける
- 頭を左右に「バタバタ」と頻繁に振る
- 耳のひだや穴の入口が赤く腫れている、触ると熱い
- 茶褐色〜黒色のべっとりとした耳アカ、または黄色のドロっとした耳アカが出る
- 耳から発酵臭(酸っぱいニオイ、チーズのようなニオイ)がする
- 耳のあたりを触ろうとすると痛がって怒る・嫌がる
【放置すると重症化!「中耳炎・耳血腫」のリスク】 かゆみに耐えかねて頭を激しく振り続けると、耳の軟骨の中で血管が破れて耳がパンパンに腫れ上がる「耳血腫(じけっしゅ)」を引き起こすことがあります。また、炎症が奥まで進行すると「中耳炎・内耳炎」となり、首が傾いたまま戻らなくなる(斜頸)などの神経症状が現れることもあります。
■ 実は逆効果!?やってはいけない間違った耳ケア

愛犬の耳が汚れているのを見つけると「綺麗にしてあげなきゃ」と手入れをしたくなりますが、間違ったケアは症状を悪化させます。
❌ 綿棒を耳の穴の奥まで差し込む
綿棒を耳道に入れると、手前の耳アカを奥へと押し込んでしまい、鼓膜を傷つけたり炎症を悪化させる最大の原因になります。
❌ 水や水道水で耳の中を洗う
耳の中に水が入ると水抜けが悪く、湿気が中に閉じ込められてカビ(マラセチア)の増殖を助長してしまいます。
■ ご家庭で安全にできる!正しい耳のケア方法
ご自宅で安全に行える耳のお手入れは、「見える範囲を優しく拭き取る」ことが基本です。
コットンやウェットシートで「見えるところだけ」拭く

指に清潔なコットンを巻き、専用の洗浄液で湿らせてから、耳のひだ(耳介)の見える範囲だけを優しく拭き取りましょう。
■ まとめ:耳のかゆみやニオイは早めにご相談ください

外耳炎は一度かかると再発しやすく、原因(細菌・カビ・アレルギー・耳ダニ等)に合わせた適切な治療薬(点耳薬や投薬)を使わないと慢性化してしまいます。
当院では、耳の中の状態を観察する耳鏡(じきょう)検査や、耳アカを顕微鏡で調べるスタンプ検査を行い、原因を特定した上で適切な治療を行なっております。
「耳を痒がっている」「ニオイが気になる」と感じたら、我慢させずに早めにご相談ください。
