【獣医解説】夏から秋の換毛期に注意!猫の「毛玉吐き(毛球症)」の危険性とブラッシング対策

8月後半から9月にかけて、朝晩の涼しさを少しずつ感じ始めるこの時期、愛猫の「抜け毛の量が増えた」「食べたものを毛玉と一緒に何度も吐くようになった」と感じていませんか?
猫は季節の変わり目に毛が生え変わる「換毛期(かんもうき)」を迎えます。特に夏毛から冬毛へと生え変わる夏終わり〜秋のタイミングは、大量の抜け毛が発生します。猫はザラザラした舌で丁寧に毛づくろい(グルーミング)を行いますが、その際に抜け毛を大量に飲み込んでしまい、胃の中で大きな毛玉(毛球)を形成してしまうことがあります。
「猫が毛玉を吐くのは生理現象だから大丈夫」と楽観視されがちですが、吐き出せない毛玉が腸に詰まると「腸閉塞」を引き起こし、緊急手術が必要になることもあります。
今回は、「横浜上永谷あお動物病院」が、換毛期に起こる「毛球症」のリスク、見逃せないSOSサイン、ご家庭で実践できる毛玉予防策(ブラッシングやフード選び)を分かりやすく解説します。
なぜ「夏から秋の換毛期」に毛玉トラブルが増えるのか?

猫の毛玉トラブル(毛球症)には、猫特有の身体の仕組みと季節的な要因が深く関係しています。
舌の構造(糸状乳頭)による「抜け毛の飲み込み」
猫の舌の表面には「糸状乳頭(しじょうにゅうとう)」と呼ばれる、後ろ向きの細かい突起(フック状の構造)がびっしりと生えています。毛づくろいをした際、この突起に絡みついた抜け毛は構造上吐き出しにくく、そのまま飲み込んでしまいます。
夏の終わり〜秋の「激しい換毛期」

日照時間や気温の変化に合わせて、密生していた夏毛が抜け落ち、保温性の高い冬毛へと生え変わります。この時期に体内に取り込む毛の量は、日常の数倍に跳ね上がります。
シニア猫や長毛種の胃腸機能低下
高齢(シニア)の猫ちゃんは胃腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下し、飲み込んだ毛を便と一緒に排出する力が弱まります。また、ペルシャやスコティッシュフォールド(長毛)などの長毛種は元々の毛量が多いため、より重症化しやすい傾向があります。
単なる嘔吐ではない!毛球症(もうきゅうしょう)の危険サイン

「毛玉を上手に吐けているから大丈夫」と思っていても、体内に毛玉が残っているケースは非常に多いです。以下の症状が見られたら注意が必要です。
[注意すべきSOSサイン]
- 「カッカッ」「オエッ」と吐き気をもよおすが、何も出てこない(空吐き)
- 食後に未消化のフードや毛玉を頻繁に吐く(週に何度も)
- 便が細くなった、固くてコロコロした便の中に毛が大量に混ざっている
- 便秘気味で、トイレスペースで踏ん張っても出ない
- お腹を触ると嫌がる、カチカチに張っている
[最悪の場合は手術も!「腸閉塞」のリスク]

胃の中で巨大化した毛玉が十二指腸や小腸へ流れ込み、腸管を完全に塞いでしまうと「腸閉塞(ちょうへいそく)」を起こします。血流が遮断されて腸が壊死(えし)したり、腹膜炎を引き起こして命に関わるため、開腹手術による毛玉の摘出が必要になります。
家庭でできる!愛猫を毛球症から守る3つの予防法

毛球症の予防において最も重要なのは、「猫が飲み込む抜け毛の量を減らすこと」と「排泄をスムーズにすること」です。
毎日の「ブラッシング」の徹底
換毛期は朝晩1日2回のブラッシングが理想的です。短毛種でもスリッカーブラシやラバーブラシを使い、不要な抜け毛を取り除いてあげましょう。ブラッシングは飼い主様とのスキンシップやストレス解消にも効果的です。
毛玉ケア用フード(食物繊維)の活用

市販の「毛玉ケア(ヘアボールコントロール)」フードは、可溶性・不可溶性の食物繊維が豊富に含まれています。飲み込んだ毛を胃の中で塊にせず、便と一緒に自然に排出させる効果があります。
毛玉除去剤(サプリメント・ペースト)の使用
嘔吐を繰り返す子や長毛種には、胃の中の毛玉を滑らかにして便からの排出を促す「毛玉除去ペースト(ラキサトーンなど)」を獣医師の指示のもとで使用するのも非常に効果的です。
頻繁な嘔吐や食欲不振は早めにご相談ください

「猫はよく吐く生き物だから」と放置していると、知らず知らずのうちに胃腸の中で毛玉が巨大化してしまうことがあります。吐気や食欲低下、便秘が続く場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
当院では、触診やレントゲン・超音波検査でお腹の中の毛玉の有無や消化管の動きを診断し、その子に合わせたケア方法をご提案しております。
